2020年2月2日
量子医療推進機構 講演会 『切らずに”がん”を治す』 新しい医療を目指して ~量子医療の最前線から~
量子科学技術研究開発機構 量子医学・医療部門長
QST放医研では1993年に世界で初めて炭素の原子(重粒子)を高速に加速してがんに照射する「重粒子線がん治療装置」を開発し、現在まで、約12000人のがん患者さんの治療を行ってきました。
そして、肺がんや肝臓がんの患者さんには1日で治療を終了する短期治療法を開発し、いわゆる、「日帰り癌治療」で、手術療法並みの良好な成績を報告しています。
現在、国内には6箇所の重粒子線がん治療施設がありますが、今後は世界の基幹病院へこの技術の普及を目指しています。
将来へ向けた技術革新も進んでおり、ビル1棟分もある照射装置の超小型化、炭素以外の様々な粒子を混ぜて照射できるようにする高性能化(「マルチイオン照射法」の開発)も目指しています。
このような新しい治療装置は、量子と呼ばれる原子などの粒子の働きによるもので、あたかも手術に使うメスのようにがんだけを処置することができるので、「量子メス」という新しい名称をつけました。
また、放射性元素が体外からどこにあるかすぐ分かることを利用して、これをがんに集まるようにすることでがんの診断ができるようにした最先端の「分子イメージング技術」や、放射線の一種であるアルファ線核種によってがんだけを選択的に攻撃する「標的アイソトープ治療法」など、最近めざましく進展している免疫療法とも組み合わせて、転移を有する進行がんの制御もできるよう、研究を進めています。
最先端の量子科学技術を駆使した「日本発の量子医療」の紹介がありました。